和風ステンドグラス「いちじく」の制作動画(後半)ができました

ステンドグラス制作動画の後半2タイトルです。

#3/4 ガラスカット編

#4/4 組み立て編

FBにもアップしたのですが、たくさんの方に見てもらえて、有りがたかったです。
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和風ステンドグラス「イチジク」完成

和風ステンドグラス「イチジク」

和風ステンドグラス「イチジク」

水墨画で原画を描いた和風ステンドグラス「イチジク」は、構図を面白くするために、あえて葉の量を少なく描いています。500×1000mmの縦長構図でもあり、枝のひょろひょろ感を出したかったためです。

東京都の個人宅に納品されます。

※この作品の詳しい説明は、ステンドグラス工房達風サイトの作品集ページで。

ステンドグラス「イチジク」の制作は、仕上げを経て終了

ハンダ付けが終われば、一気に仕上げ作業です。仕上げと言っても、案外込み入ったプロセスがあります。

まず、きれいに洗浄です。ハンダの時塗布したフラックスを洗剤とお湯で洗い流し、ハンダは真鍮ブラシで磨き上げます。

ハンダ後の洗浄

ハンダ後の洗浄。中性洗剤を掛け、真鍮ブラシで磨き上げます

曇りが取れて、ピカピカです

曇りが取れて、ピカピカです

次に、ハンダ線を黒く染めます。二酸化セレンと言う薬品を使って、化学反応で黒くします。ステンドグラス専用の薬品です。

黒染め

黒染めは、スポンジで薬品を刷り込む要領で

そして、またまた洗浄。セレンを洗い流します。ステンドグラスは、洗浄を良くしておかないと、ハンダが後々錆びます。

セレンを洗い流す

セレンを洗い流す。今度は優しく。

乾いたら、補強枠の隙間に、パテを詰めます。これで、窓の密閉性が得られますし、ホコリも溝にたまりません。

真鍮の補強枠に溝に、パテを詰めます

真鍮の補強枠の溝に、パテを詰めます

最後に、防錆用のワックスを塗布して終了。

ワキシング

ワキシング。これを怠ると、ハンダが、数年後に白い粉を吹いて錆びだします。

完成した作品の写真です。葉のグレーが効いていて、締まった絵になりました。オナガ(鳥)の尾も淡いブルーでかわいいです。

ステンドグラス「いちじく」完成

ステンドグラス「いちじく」完成

もう一度、原画も載せておきます。

水墨画で描いた原画

水墨画で描いた原画

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ステンドグラス「イチジク」の制作は、ハンダ付け段階です

工程は最終段階のハンダ付けです。ステンドグラスの組み方には、大きく分けて2通りあります。一つは伝統的にヨーロッパで培われてきた鉛線組み、もう一つは、アメリカと日本で盛んな銅テープ(ハンダ組み)技法です。ここでは、後者を使います。

100W半田コテを使って、組み立て

ガラスピースを全て型紙上に並べたら、100W半田コテを使って、組み立てです。

コパーテープ部分に融けたハンダが付きます。その前に、ペーストフラックスを塗って、酸化膜を除去して、ハンダがのりやすくします。

ペーストの塗布は、銅テープと、その周辺のガラスにも

ペーストの塗布は、銅テープと、その周辺のガラスにも

ハンダは6-4ハンダと言われる、オーソドックスなものです。

コパーテープ上にハンダを盛っていきます

コパーテープ上にハンダを盛っていきます

表面のハンダが終わりました。

表面のハンダ終了

表面のハンダ終了。ハンダは、銅テープと親和性が良く、ガラスははじくという都合の良い性質を持っています。

次は、同様に裏面のハンダです。

ベニヤ板でサンドウィッチして、ひっくり返します。

ベニヤ板でサンドウィッチして、ひっくり返します。

ステンドグラスには、表裏の違いが無い場合があります。この作品も屋内の扉に付きますので、表裏がありません。裏も、きれいに仕上げます。裏も終わったら、作品に強度を持たせるために四方に補強枠を付けます。これには断面がH型をした真鍮鋼を用います。

真鍮製の補強枠を寸法通りに切断します

真鍮製の補強枠を寸法通りに切断します

ステンドを囲み、4隅をハンダで止めます。ガラス板は、H鋼の溝にしっかりはめ込まれています。

補強枠の四隅をハンダで止める

補強枠の四隅をハンダで止める

これで、ハンダは終了です。すっかりステンドグラスらしくなりました。

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和風ステンドグラス「イチジク」は、銅テープ巻き段階です

数百個ものガラスピースの整形が終わると、次はステンドグラス専用の銅フォイル・テープをガラスの縁に巻いていきます。

銅テープ

ディスペンサーから出ている麺のようなものは、銅テープです。剥離紙を剥がすと、シールのような粘着面になっています。

銅テープは、5種類の幅のものを用意しておいて、ガラスの厚さや面積に合わせて、使い分けます。ガラスピースの切断面は、研磨機で荒らしてあるので、粘着面が良く着きます。

はみ出したテープは折り曲げて、一部表に被せます

はみ出したテープは折り曲げて、一部表に被せます

テープ幅は、ガラスの厚さより1mmほど大きいものを使います。ですので、表裏でそれぞれ0.5mmずつはみ出します。その部分は、表と裏に被せるように折ります。

テープをヘラで押して、中の空気を抜きて、密着させます

テープをヘラで押して、中の空気を抜いて、密着させます

この作業は、ある意味、ガラスカットより神経を使います。ガラスのカットした切断面は、多少汚くても下手でも、銅テープの中に隠れますが、銅テープの折り返した縁は、ステンドグラスの完成時にばっちり見えてしまいますから。

テープを巻き終わったピースをコンテナで管理します

テープを巻き終わったピースをコンテナで管理します

すべてのピースのテープ巻が、数日の作業で終わり、いよいよ組み立て段階です。ここではじめて、ピースを並べて、ステンドグラスの全容を見ることが出来ます。

組み立て用型紙の上に、ガラスピースを、ジグソーパズルの要領で並べていきます。

これから、ピースを平面に並べます

これから、ピースを平面に並べます

型紙には、番号が振ってあるので、組み立て用の台紙の対応する場所に置いていきます。

イチジクの絵になってきました!

イチジクの絵になってきました!

全部並べたら、組み立て(ハンダ付け)作業です。

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和風ステンドグラス「いちじく」の制作動画(前半)ができました

ステンドグラス制作の様子を動画でご紹介します。

まずは、前半戦2タイトルです。


#1/4 水墨画による原画の制作


#2/4 型紙の制作

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和風ステンドグラス「イチジク」の制作は、ルーターで研磨中です

全てのガラスピースのカットが終わり、研磨作業です。ガラスカットと言っても、実際は傷を付けて割っているので、周囲は鋭く尖っています。このままでは手を切ったり危険ですし、周囲に銅テープを巻くのですが、うまく着きません。そこで、ダイヤモンド砥石を回転させて、周囲を研磨するルーターを用います。

カットしたガラスピースの周囲を研磨するルーターと言う電動工具

カットしたガラスピースの周囲を研磨するルーターと言う電動工具

ルーターを使って、ピースの一つひとつ、周囲を研磨します。ぐるっと、一回なめれば終了です。鋭かった切断面は、研磨されて程よくざらっとした肌になります。

中央上部に、回転砥石が写っています。これにピースを押し付けて研磨します。

中央上部に、回転砥石が写っています。これにガラスピースを押し付けて研磨します。

ヨーロッパのステンドグラス職人は、このルーターをほとんど使いません。ガラス同士をちゃんちゃんとこすり付けて、研磨は終わりです。日本とアメリカのステンドグラス制作者は、このルータを多用し、最終的な形状調整をします。

研磨の終わったピース。すべて型紙より一回り小さく仕上がっています。

研磨の終わったピース。すべて型紙よりわずかに小さく仕上がっています。

私の場合、ガラスカット時点で、型紙よりわずかに小さく切っているので、ルーターではほとんど形状調整が不要です。尖ったところを丸くするだけです。

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墨画風ステンドグラス「イチジク」は、ガラスカットの真っ最中です

注文制作の「イチジク」はここ数日、ガラスカットが続いています。
赤いガラスで、実の部分を表現し、3階調のグレーのガラスで葉と茎を表現します。

使用するガラスの原板です

使用するガラスの原板です

全体の90%のガラスがステンドグラス専用のアンティークガラスで、特に赤いストリーキーガラスが高価なものです。

赤いガラスの上に、イチジクの実の型紙を置いて、その輪郭をけがいています

赤いガラスの上に、イチジクの実の型紙を置いて、その輪郭をけがいています

また、ストリーキーは、赤の濃淡が流れ模様のようになっていて、とても美しいです。切るのがもったいないくらいです。

マジックのケガキ線の少し内側に、ガラスカッターで傷を付けていきます。

マジックのケガキ線の少し内側に、ガラスカッターで傷を付けていきます。その後プライヤーで折り割ります。

墨画風ステンドグラスの特徴は、ほとんどのパーツをグレーで表現するところにあります。葉の部分にもグリーンは一切使いません。

グレーのガラスの上に葉の型紙を配置しています

グレーのガラスの上に葉の型紙を配置しています

イチジクの葉は、切れ込みが大きく、細分化しないと切れません。

葉は、外周だけでなく、葉脈の部分でも切っていきます。

葉は、外周だけでなく、葉脈の部分でも切っていきます。

写真左側のコンテナに入っているのが、切り終わったパーツです。型紙とガラスピースを1対1対応で重ねて、管理します。

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ステンドグラス制作者の「ぎやまん草子(その19)」 「アンティークガラス」

もう10年近く前の事ですが、地元龍ヶ崎にあるガラス工場「カガミクリスタル」を見学しました。ここは、日本芸術院賞を受賞し、日展参事でもあったガラス作家・故各務鑛三(かがみ こうぞう)氏が興した日本初の本格的なクリスタル会社です。広い敷地内では、多くの職人達が、クリスタルのコップや花瓶、お皿を伝統的な吹きガラスで成型し、切子やグラビールといった研磨技法で装飾し、素晴らしい作品に仕上げていました。ここは、昔で言う宮内庁御用達でもあります。
古来ガラス製品の多くが、カガミクリスタルと同じ吹きで作られてきました。これは、長い鉄管の先に高温で水飴のようになったガラス塊を付け、管のもう一方の端から息を吹き込んでガラスを膨らませる技法です。食器類はもとより、大きな板ガラスもこの方法で作られてきました。そしてヨーロッパには、今もこのアンティークな技法でステンドグラス用板ガラスやお城の窓ガラスを作っている工場がわずかに残っています。
平成12年に、そんな工場の一つフランス南部のサンゴバン社を訪れました。腕っ節の強そうな職人が、長さ二メートルくらいの鉄管を操り、直径50センチ、長さ1.5メートルほどの巨大な円筒状の瓶を吹き上げていました(写真1)。実は私も吹きガラスを体験したことがあります。普通に吹くとガラス風鈴のように球状に膨らむだけなんですよね。しかも、管とその先についたガラス球が意外に重く重労働です。彼らサンゴバンの職人は、管をくるくると回転させながら見事にきれいな円筒状に膨らましていました。次の工程で、この瓶の頭とお尻の部分を切り落として筒状にし、これを開いて板ガラスにします。出来上がったものをアンティークガラスと言います。
吹きで一枚一枚手作りされたアンティークガラスはそれ自体が芸術品です。ステンドグラス制作者は、その芸術品に傷を付け、切り刻み、再度組み合わせて新たな作品にします。ゆめゆめ、板ガラスが本来持つ美しさを損なうこと無きよう努めます。

サンゴバン社のアンティーク製造の様子

写真1:サンゴバン社のアンティーク製造の様子

行灯「鯉」

写真2:アンティークガラスの美しい模様を活かすように作ったステンドグラス行灯「鯉」、サイズ:直径19cm×高さ49cm

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