ステップF2:自作モールドと型紙デザイン

 《1》 自作モールド
 円筒行灯のモールド(組み立てるための型)は、ボール紙で自作します。 仕上がったシェード部分の内径を140mm、高さを460mmとしますので、その内側に入るモールドは、 外径を140mm、高さを500mm(シェードより少し長め)で作ります。
 材質はボール紙が良いです。蓋と栓になる直径139mmの円盤を少し厚みのあるダンボールで作っておき、 これに460×500mm程度の長方形のボール紙を巻きつけて糊付けします。仕上げとして、 強さと耐水性を持たせるために、透明の糊付きビニールフィルム(ブックカバーなどに用いるもの)を廻りに密着して貼っておきます。
 最後に、円周と長さを測っておきます。特に円周は正確に実測しておき、その値を基に型紙を作ります。 計画通りに出来ているとすれば、円周は、140mm×3.14=440mmになっているはずです。
モールドの作り方
モールドの直径を確認 モールドの長さを確認
 《2》 デザインの素材収集
 デザインのモチーフ(主題)や、その収集方法、デザイン画の描き方は、基本的には自由です。 ですが、多くの人に見てもらう作品を作るのであれば、ある程度美術の定石に従うほうが良いでしょう。 動植物をモチーフにする時は、できるだけ自然の現物を見て、できればスケッチしておくことを勧めます。
 今回のモチーフは、「梅と椿」にしてみます。屋外に観察に行くと(11月)、椿ではなく同属の寒椿が満開でしたので、 この花周辺をスケッチすることにします。 寒椿の葉は少し尖がっていて、椿の趣が無いので、葉の部分は現物の椿をスケッチしておきます。
 椿の特徴は、大きく厚みを感じさせる花と、その花を取り囲むように配置された逆卵形の葉です。
寒椿をスケッチ 寒椿の枝ぶり 赤い寒椿
 梅はちょうど葉が落ちたばかりで、小さなつぼみが付き始めていました。これも、枝ぶりだけスケッチしました。 花は、部屋に戻って過去に描いたスケッチと図鑑を見て描くことにします。
 梅の枝振りの特徴は、古さを感じさせる太い幹から、すっと上に伸びた若くて直線的な細い枝です。 「梅切らぬ馬鹿」というように、梅はまめに剪定し、花芽を付けた若い枝を毎年出させるのが特徴です。 また、幹には淡い緑色の独特の地衣類が繁殖していて、趣を持たせています。
梅をスケッチ 梅の枝ぶり
 《3》 原画作成
 スケッチや図鑑や資料画像を用意して、スケッチブックに原画を描きます。 原画は小さいほど気後れせずにのびのび描けるものです。 また、小さい方が、座った位置から配置や全体のバランスを確認しやすいです。 私は、葉書ほどの大きさの原画を数枚描くようにしています。 その中から、最終的に出来の良いものを選びます。
 今回は、原寸型紙=モールドの展開図ですので、横440mm(円周の長さ)×縦460mmの長方形になります。 ですから、小さな原画もこの縦横比に従ったものにします。つまり、ほぼ正方形の原画を描けば良いでしょう。
 絵としては、梅を画面いっぱいに描き、下のほうに椿を配しました。日本画の定番配置といえます。
原画を数枚描く 最終的に選んだ1枚
 《4》 型紙作成
 先ほど描いた原画を基に、方眼紙に原寸大のデザインを描きます。 A3方眼紙数枚を貼りあわせて大きな用紙を作り、横440mm(円周の長さ)×縦460mmの長方形を描きます。 その中に、鉛筆で原画の拡大図を下描きとして描きます。
方眼紙に原寸大のデザインを描きこむ

 下図は出来上がった下描きです。この時点では、まだガラスの切断性を考慮していません。
原寸大下描き

 最後に型紙として完成させるために次の検討を加えます。
 @ 円筒といっても実際は正多角形柱なので、一定の幅の縦線を入れます。 今回は、正20角形柱にしたいと思いますので、22mm幅で縦線を入れます(440mm÷20=22mm)。 背景部分は正確な22mm幅の短冊形にしますが、樹の幹はもう少し自由な幅で絵画的な縦線を入れます。 しかし、幅が広すぎると滑らかな円筒になりませんので、30mmを最大幅としておきます。 葉や花弁は、1ピースの幅が30mm以下になるように、描きなおします。
正多角形柱にするための縦線
 A ガラスの切断性を考慮して修正します。 具体的には、極端に細いところや、急激な凹カーブを無くしていきます。
 B 左右の縁で絵が連続するように、方眼紙を丸めて修正を加えます。
左右の縁で絵が連続するように
 修正が終わりましたら、鉛筆の線の上から0.1mmのマーカーで清書します。 鉛筆の下描きを消し、薄く色を付け、最後にピースに番号をふって型紙(原紙)の完成です。
完成した原寸大型紙
 コピーを2枚作って、これを型紙とします(ガラスカット用と組立て用)。
型紙

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