ステンドグラスは ほとんどの窓に取付可能です
1.FIX窓に取り付ける方法
最も一般的な、ステンドグラス・パネルの取り付け施工方法です。 新築の時、ステンドグラスをオーダーされるほとんどの方はこの方法を採ります。 ですが、必ずしも新築のタイミングにあわせる必要は無く、お引越し後でも、長年住まわれたお宅でも後付け可能です。
FIX窓(はめ殺し窓)とは、窓が開閉できないタイプのサッシ窓のことです。 ステンドグラスはこのFIX窓の内側に固定するだけです。 具体的には、窓の額縁(四方枠)という部分に、押縁(おしぶち)と言われる断面15mm×15mmほどの角材を用いてステンドグラスを固定します。
※注:ここで言う額縁とは建築用語で、サッシ窓と壁紙の間にある(多くは木製の)枠部分の事です。 絵画を入れる「額」とは異なりますので、ご注意ください。三方枠やクロス巻き込み仕上げの場合も、考え方は同じです。
一旦ステンドグラスが取り付けられますと窓は開閉できませんので、 ステンドグラスを入れる計画のある窓には、予め開閉しない窓=FIX窓を取り付けておく必要があります。 工務店の担当者さんには、設計段階からその旨を伝えておいた方が良いです。



下図(1)のようにパネル作品を既存のFIX窓(はめ殺し窓)の内側から取り付け施工することをお勧めします。 つまり既存の窓ガラスは外しません。これは、作品に直接風雨が当たらないようにするためと、セキュリティーのためです。ですから、ステンドグラスは建築終了後にも押縁と木ネジだけで簡単に取り付けることができます。
取り付けを希望される窓が決まりましたら、図(2)の額縁内側の寸法=幅W、高さHの2箇所 をmm単位で測定してお知らせ下さい。奥行Dは40mm以上あればOKです(それ以下の場合はお知らせください)。カマチ幅Kは、30mm以上ある時のみお知らせください(Kが大きいとステンドグラスに影が出来て、見栄えに影響するためです)。
ちなみに実際のステンドグラスは、幅、高さとも、額縁内側の寸法(WとH)より4mmほど小さく作ります。


2.丸窓に取り付ける方法
取り付け方法は、基本的には上記の「1.FIX窓に取り付ける方法」と同じで、額縁に対し押縁で固定して取り付けます。 異なる点は、額縁が方形ではなく、円形だという点です。

上図に示すように、ステンドグラスは額縁(多くの場合はサッシメーカーがオプションとして用意している標準品)の内側に付ける方法が簡単です。 制作を依頼される時は、予めこの額縁の内径を調べて頂き、お伝えください。 ただし、仕上げに額縁を使わずクロスを巻きこむ方法や珪藻土などの左官仕上げをする場合もありますので、ご注意ください。
《実際の取り付け事例》
丸いFIX窓に取り付ける場合、柔らかく曲げ易い押縁を使います。 この場合、ホームセンターや建築資材売り場で手に入るABS樹脂などのプラスチック製のモール材を流用すると便利です。 その他にも、籐や薄板の木材を押縁として使う方法もあります。




3.開閉窓に取り付ける方法
ここで言う開閉窓とは、開け閉めできるごく普通のサッシ窓のことです。 引き違い式、縦スライド式、横スライド式など、方式も様々です。建物のほとんどの窓がこの方式ですので、ここにステンドグラス・パネルを後付けできればステンドグラスを楽しむ機会はぐっと増えます。方法は、ここで説明する「扉方式」と、5章でご説明する「吊るし方式」があります。 どちらも、時々窓を開けて風を入れることが可能です。
「扉方式」の場合、既存の窓サッシに合わせて作品をオーダーする必要があります。 ステンドグラスは直接サッシの額縁に固定するのではなく、額縁より一回り小さい木枠に収めてから取り付けます。この木枠を蝶番を利用してサッシ窓の額縁に固定します。 蝶番を使っていますので、扉のように開閉が可能です。
木枠には、ステンドグラスを入れても変形しない強度が必要です。ステンドグラスサイズが500mm(横)×1200mm(縦)だと仮定して、断面が40mm×50mm程度の角材を使用すればよいと思います。木枠の制作や取り付け施工は、施主様のお近くの工務店さんか大工さんにお願いすることが多いと思います。



4.屋内開口に取り付ける方法
部屋と部屋、あるいは部屋と廊下を隔てる壁に開口を設けて、ステンドグラスをはめ込む場合です。ご注文を受ける内の1~2割はこのパターンです。 破損やカビの心配も少なく、作品の清掃なども容易、かつ取り付けも容易ですが、採光には一工夫必要です(後述)。


下図(3)のように、開口にはあらかじめ額縁を設けておいて、押縁で挟み込むように施工します。取り付けを希望される窓が決まりましたら、図(4)の開口寸法(幅W、高さH)をmm単位で測定してお知らせ下さい。ステンドグラスは、幅、高さとも、開口寸法より4mmほど小さく作ります。


室内取り付けの注意点
《注意点1》 ステンドグラスは暗い側から見るもの
ステンドグラスはその背後に何らかの光源(バックライト)が必要です。 言い方を変えると、メインで観賞する部屋はその背後の部屋より暗い必要があります。 明るい側の部屋から見ると、あまりぱっとしません。しかし、昼と夜とでこの明暗の関係が逆転する場合も多く、あまり神経質に考える必要もないかもしれません。

《注意点2》 ステンドグラス越しに背後の部屋の様子が見えてしまいます
ステンドグラスは普通の作り方ではガラスが透明ですので、例えば玄関付近に取り付けた場合、背後の部屋の様子が来訪者から見えてしまいます(ガラスは色が付いていて且つ歪んでいるので、はっきりとは見えませんが)。プライバシーを気になさる場合は、対策は下記と共通ですのでご参考にしてください。

《注意点3》 背後から照明を直接あてるとまぶしいです
電球や蛍光灯の点光源をステンドグラスの背後から直接当てると、まぶしい“点”として見えるだけで、ステンドグラス面が均一に光ることは無いです。つまり、綺麗ではありません。

しかし過去の事例では、多くの場合、背後がホノ明るい部屋だったので、 特に対策は必要ありませんでした。
一方、背後の部屋が納戸やガレージだったりして普段暗い場合は、 照明を使って積極的に照明した方が良いでしょう。その場合は以下のような対策が必要です。


この方法が、最も簡単だと思います。


一種のスリガラス化処理で、ガラスには表/裏が出来ます。 メインで観賞する側を表にします。裏側は、ガラスが白っぽくなります。この方法をご希望の場合は、ご注文時にご連絡ください。ただし、制作費は1割ほど割高になります。

この場合、光源が直接目に入らないように奥まったところに設けて下さい。 電球の位置は、上下でも左右でもいいです。 また、電球交換などのメンテナンス性を考慮して、ステンドグラスの固定は上記「3.開閉窓に取り付ける方法」で紹介した開閉式も良いです。



5.既成作品を吊るす方法
既製品のステンドグラスを飾る場合、金具を使って、窓サッシの額縁上辺から吊るす方法があります。 この方法ですと、このサイトの「在庫・販売対象作品」ページ でご購入された作品を、簡単な日曜大工で、手軽に飾ることが出来ます。
方法としては、サッシ窓の額縁上辺に、ヒートンと言われる「?」形をした金具を2個ねじ込みます。 これに短い鎖を介して、作品を吊るします。
当工房のステンドグラスの場合、予め木枠が付いている作品と付いていない作品があります。 木枠が付いている場合は、事前にフックをお取付するサービスもありますので購入時に仰ってください。 木枠が付いていない作品の場合、ご希望により木枠をお作りするか(有料)、作品周囲の補強枠に鎖を通す小さな穴をお開けします(無料)。ガラス単板のフュージング画に関しては、木枠の追加(有料)をご指定下さい。


6.壁の前に飾る方法
ステンドグラスの背後に窓があり、バック光源として外光が差し込むことがベストではありますが、色々な事情で壁際にステンドを飾ることも考えられます。 現に私の個展では、ほぼすべてこの方法で展示しています。
方法としては、背後の白壁をスッポットライトで照らす、と言うモノが簡単できれいです。 壁は色の無い白がベストです。 また、作品に直接光を当てるのではなく、壁に当てて反射を利用するところがポイントです。 壁面と作品との間に20cm程度の空間を設けてください。 また、光源は蛍光灯より白熱灯の方が(特に紫などの)色再現性が良いです。
この他にも、天然光源(外光)が取れない場合の照明方法は、 上記「4.屋内開口に取り付ける方法」の【対策①②③④】をご参考にしてください。

7.よくあるご質問
工務店さんや、お客様から、しばしば頂くご質問と回答をまとめてみました
Q1.ステンドグラスの寸法(幅、高さ、厚み)は、どこの部分を指すのですか?
A.達風では、幅Wと高さHの定義は、作品のまわりを取り囲む真鍮枠の最外周としています (光を通すガラス部分の寸法ではありません)。
真鍮枠は、断面が”H”型をした硬い金物で、作品と一体になっており、作品を破損から守っています。 真鍮枠の幅寸法は、10/12/15mmの3サイズがあり、作品の大きさにより使い分けています。 概ね長辺が1m以内の作品は10mm、2m近いものは15mmを使います。
また、作品の厚みは真鍮枠の厚さ(約9mm)を指します。 ちなみに使用しているガラスの厚さは、約3mmですが一定していません。工務店さんと「取り合い(収まり)」のお話をする時、この真鍮枠の寸法だけ詰めれば済むことが多いです。


Q2.ステンドグラスの制作誤差は、どのくらいですか?
A.±2mmです。例えば幅1000mmでお約束した作品は、実際出来上がると998mmから1002mmの間の寸法になります。 ですので、開口寸法に対して余裕を持って幅/高さとも4mmほど小さく作るようにしています。
Q3.もし、出来上がった作品の方が開口よりも大きかったら、どうするのですか?
A.そのようなことが起きないように、制作前の打ち合わせは綿密に致します。ですが仮定のお話としては、その場合、外周部の真鍮をグラインダーで削ることは可能だと思います。しかし振動でガラスにヒビが入る危険性があるので、開口側(額縁など)を削る方が安全だと思います。
Q4.窓に取り付けた後、結露しませんか?
A.幸いにして、今までそのようなご報告は頂いていませんが、可能性としては考えられます。 窓ガラス(サッシ窓)とステンドグラスの間に結露が生じてカビが生えるということも考えられます。その為にも、ステンドグラスを固定する押縁は接着固定や釘止めせず、着脱できるように木ネジ止めにして下さい。 そうすれば、いざと言う時ステンドグラスを外して掃除することが出来ます。 また、サッシ側の窓ガラスはペアガラスにしておいてください。