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C.《小結》コース 〜ステンドグラス中パネルの作り方〜
ステップ C1
概要説明
ステップ C2
デザイン講座
(パネル編)
ステップ C3
ガラスカット
ステップ C4
凹カーブのカット
ステップ C5
ルーター技法
ステップ C6
コパーテープの
補修技法
ステップ C7
半田技法
(美しい半田)
ステップ C8
半田技法
(飾り付け)
ステップ C9
周囲の補強
ステップ C10
洗浄と黒染め
付 記
工具と消耗品一覧
ステップC2. デザイン講座(パネル編)
《1》 題材を決める
題材(モチーフ)を選ぶとき、ステンドグラスにしやすいものと、しにくいものは、確かにあります。 例えば菊の花は、恐らく題材には向きません。 何故ならば花弁が小さく、数が多すぎて、ガラスを切るのが大変だからです。
ですが、そのような技術的な制約を最初に考えるより、自分の好きな花や動物を、ステンドグラスに したい、という気持ちが大切だと思います。 でなければ、苦労してオリジナルのデザインに挑戦する意味がありません。
私の場合、題材は、お客様(クライアント)から指定されることが多いです。 ですのでその準備として、日々庭や林、公園や街路樹に目を向け、あらゆる花や木の写真を撮るようにしています。 また、庭にやってくる野鳥や蝶、カエルなども題材になります。 また、バラや百合など、人気が高く依頼されることが多い花は、なるべく鉛筆でスケッチして残すようにしています。 その方が、より詳細な特徴を記すことが出来るからです。
また、散歩中にふと目にした草木や花で、制作心を擽られこともあります。その場合、すぐにデジタルカメラで 撮影して、自主制作のステンドグラスに仕上げます。 重要なことは、題材を含めた自然や事物に常日頃アンテナを張り、愛情を持つことが大切だと思います。
今回は、カラスウリ(烏瓜)を題材にします。これを目にしたとき、他人の土地に生えていたので、 持って帰ることができず、やむなく写真での記録です(下図)。 見た目の印象も重要ですので、一生懸命記憶に留めました。
まず原画ですが、皆様は、色鉛筆など、ご自分が使いこなせる画材で描いて下さい。 私は水墨画が好きですので、これで描かせてもらいます。 水墨画は、思いきりよく、しかも早く描けるので、慣れると便利です。
絵を描くことに抵抗がある方は、図鑑や、絵葉書、ポスターなどを利用して、これを写すか、少し修正するかで、 原画に仕上げて下さい。ただし、著作権がありますので、できた作品は個人的に楽しむ範囲にしてください。
《2》 リアリティのある面白い絵を描く
ここでは、水墨画の描き方は解説しません。原画をデザインをする上での共通ポイントをご紹介します。 描き上げた原画は、下のとおりです。
(1) 最初は、ステンドグラスにすることを意識せず「一枚の絵にする」ことに集中します。
(2) 絵である以上、写真の丸写しではなく、枝やツル、実の配置を作者自身の好みで、アレンジします。
(3) 作品に面白味を持たせるために、細部のリアリティ(現実味)を大切にします。 具体的には、枝からの葉の出方や、実の重量を感じさせるツルのたるみ加減など、対象を良く観て、 手を抜かず表現しなければなりません。 例えば、自然の葉は、必ずしもすべてお行儀良くこちらに向いているわけではありません。裏や横を向き、ねじれても入ます。 虫食いもあります。そのような葉を描くと、不思議と自然界の命が絵に吹き込まれます。
さらに詳しく、下の図を使ってリアリティについて考察します。 私達は、知らず知らずのうちに、花や葉の形は「こうだ」という固定観念にとらわれ、 きれいに整ったものを描こうとしてしまいがちです(図の左側)。 さらに、ステンドグラス制作を意識しすぎて、ガラスカットし易い、のっぺりとした形になってしまいます。 そして実際他人が作った作品やパターンブックの中に、そのような花や葉を目にすることがしばしばあります。
このようなデザインの作品は「綺麗だけど、印象に残らない、なにか面白くない」と感じてしまいます。
面白い作品とは、題材となる草や木、花に向き合い、謙虚にありのままの生命を写し取る心構えが必要だと思います。
《3》 構図について
構図に関しても「面白い構図」を心がけます。面白いとは、言葉を変えると趣があるということです。
これを、多少理屈をつけて解説します。
(1) 下図左に示すように、画面内に「疎」と「密」のエリアを設けます。モノと空白といってもいいでしょう。 特に「空白」は大切です。なにも考えずに漫然と描いていると、どうしてもバランス感覚が働いて、 満遍なくモノ(葉や実)を配置してしまします。 しっかりと空白を作るんだ、という意識を持って、モノの配置にメリハリのある偏りを設けてください。
(2) 下図右に示すように、目玉となる実や花(ここではカラスウリの実)が、 水平にも垂直にも並ばないようにしてください。また、3個以上が直線上に並ばないようにしてください。
(3) 目玉となる実や花の数は、出来れば陽数(奇数)個にしてください。
(4) 今回のカラスウリの絵では該当しませんが、枝を3本配置する場合、 頂点が不等辺三角形になるようにすると(天・地・人の配置)、オサマリがよいです(生け花の要領)。
以上は、日本画の構成例などでよく目にするものですが、一応目安として心に留めておいてください。
《4》 原画から型紙へ
こうして原画ができましたら、ライトボックスなどを利用して、方眼紙や方眼トレーシングペーパーに写しとります。 ここからは、型紙作りとなります。ですから、ステンドグラス制作時の「ガラスをカットできるデザイン」という要素が入ってきます。
方眼紙へ写し取った時点では、最終的な作品寸法ではなく、縮小版の型紙となります。 最終的には、これを拡大コピーして、原寸大型紙にします。
なぜ無地の白い紙ではなく方眼紙を用いるのかと言うと、拡大コピーした型紙を糊で貼り合わせる時に便利だという点と、 流れ模様やヘアラインのあるガラス(ストリーキーやフィブロイドガラス)を配置するとき、 ピースの水平方向がわかる、と言う2つの理由からです。
《5》 型紙への変換
ガラスがカットできるデザインとは、特に図案中の尖った部分で重要になってきます。
左図は、葉や実の先端部=尖ったところに丸いマークを記しています。 これでは、葉や実を囲む背景のピースに深い凹カーブができてしまいます。これでは、ガラスが切れません。
そこで右図に示すように、先端部に格子模様の線や、原画には無かった小枝や蔓などを置いて、 凹カーブを無くしていきます。これをカットラインを入れる、と言います。カットラインをあたかも図案のひとつとして 美しく見せることも大切です。
《6》 縮小版型紙の仕上げ
こうして左図の縮小版(1/1.5の縮尺)型紙ができました。外周に注目すると、二重円が描いてあります。 外側の円が、作品の最外周で、同時に補強のために巻くレッドケイム(鉛線)の外周でもあります。 内側の円はガラスの外周を表す線です。 今回は、10mm幅のレッドケイムを巻くので、下図右を見るとわかるように二重円の間隔は6mmです。
この講座と同じ「烏瓜」を作りたいときは、下図左をクリックして拡大表示したものをプリントアウトしてご利用ください。
《7》 実寸大型紙
実寸大型紙を作る場合、コンビニや事務所のコピー機を利用することが多いと思います。そこでは最大でA3用紙しか使えません。 そこで、数枚の部分拡大コピーを取ってきて、糊で貼り合わせ大きな1枚に仕上げます。
今回は1.5倍(150%)に拡大した4枚を貼りあわせて1枚にしました。このとき、方眼紙の罫線が貼り合わせの手がかりになりますので、 コピーを取るとき少し濃い目に調整すると良いです。
また、拡大コピーするときの倍率は、縮小版型紙の大きさによって変わってきます。 今回のこのカラスウリをそっくりそのまま作られる方は、このサイトの画像(上図・左)を一旦プリントアウトして、 それを拡大すると思いますが、その場合も、最終的な最外周の円の直径が50cmになるように、倍率を計算してください。
こうして、実寸代型紙を2枚用意します。下方は、原図である縮小版型紙です。
《8》 ガラス選定
型紙に書いてあるアルファベットとガラスの種類の対応を下表に示します。今回、折角原画を水墨画で描いたので、 ステンドグラスも水墨画風に、実のオレンジ色以外は、無彩色(グレーとクリア)にしたいと思います。 グレーの葉のステンドグラスはあまり目にすることはありませんが、とても落ち着いたよい感じに仕上がると思います。
皆様の中には、「葉は絶対緑色がいい」という方もいると思いますので、天然色系の配色も、ご参考として記しておきます。
記号
水墨画風:
今回の選択(ガラス品番)
天然色系
a
セレニウムレッド(SGS182)
赤
b
セレニウムオレンジ(SGS183)
オレンジ
c
濃いグレー(ALFJ219)
濃い緑
d
中間のグレー(ALX2854)
中間の緑
e
淡いグレー(ALX1695)
淡い緑
f
フィブロイドのクリア(UR70-00)
フィブロイドのクリア
g
クリア(ALX1)
クリア
今回使うガラス(UR70-00以外)を含む、サンゴバン社のセレニウムシリーズのガラスの写真を下に示します。
■写真はクリックすると拡大表示されます■