ステンドグラス制作者の「ぎやまん草子(その9)」 「裸」

ステンドグラス「レディ・ゴディバ」

ステンドグラス「レディ・ゴディバ」

西洋の美術史上、裸婦像は最もポピュラーな画題のひとつですが、実はその取り扱いには不文律のような縛りがありました。それは、神や天使、悲劇のヒロインなど神話や聖書・歴史の登場人物だけが裸で描かれることを許されていたのです。ですから、1863年に初めて「同時代の女性の裸」を描いたマネは、最初轟々の非難を浴びました。

では、自分が裸婦像を鑑賞するとき、神話的背景があった方が良いのか、あるいは「ストレートな裸」の方が良いのか。私の場合、両方とも、です。神話的背景があった方が、心の座りは良いのと、特に悲劇のヒロインなどには感情移入出来るという点で、作品の深みが一段増して見えます。一方「まっさらの裸」はルノワールの云う「肉体そのもの」がストレートに飛び込んでくるので、動揺させられるわけです。動揺を感動の一種と位置づけるなら、これもまた捨てがたい世界です。

写真の作品は、レディ・ゴディバ(ゴダイバの方が発音的には近い)という11世紀のイギリスに実在した女性を題材にしたものです。ですから、これは神話的背景のある裸婦像ということになります。ゴディバはベルギーの高級チョコレートメーカーの社名になっているのでご存じの方も多いと思います。重税に苦しむ民衆を助けるために、一人犠牲になってこのような格好にさせられている悲劇のヒロインです。ちなみにこの原画は、ほとんど私の想像の産物です。

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