ステンドグラス制作者の「ぎやまん草子(その8)」 「誰が見る」

中学に上がる時、憧れの土地付き一戸建てに引っ越しました。新築とは楽しいもので、間取りやキッチンはもちろんのこと、照明、壁紙、ドアノブなど細部に至るまで、家族会議で一つひとつ決めていったことを憶えています。

ところで私たちは、新築の時どの部屋に一番力を入れるでしょうか。キッチンやリビングと並んで、玄関のデザインに凝るという人が多いのではないでしょうか。他人の目にさらされる所についつい力を入れてしまう。お披露目の時「自分達のこだわりの家です」と言っていながら、お客様に評価されることをやたら期待したりして。

ステンドグラスの注文を受けるとき「外から見て綺麗なものをお願いします」と言われることがよくあります。住人より、家の前を通る人達に楽しんでもらいたいわけですね。ヨーロッパ人だと多分そうは言いません。家は第一に住人が楽しみくつろぐ場なので、室内側から見て綺麗なステンドグラスを注文するでしょう。そしてステンドグラスは本来、暗い側(つまり室内側)から見て美しいものなのです。

かつて武士は、母屋は朽ちても門構えは立派にしていたそうです。そう言えば、私のかつての拙宅も、照明は玄関の物が一番高価でした。他人の目を気にする国民性を理解して、内側から見ても、外側から見ても美しいステンドグラスを考えていきます。

ちなみに下の写真の作品は、オレンジ色の部分にオパールセントガラスという半透明ガラスを用いています。このガラスは夜外から見ると、室内の電球の光を受けて美しく浮き出します。

作品「夢と希望」を室内側から見たところ

作品「夢と希望」を室内側から見たところです。
サイズ:49×125cm×3枚

室内の照明できれいに照らし出されています

夜、屋外から見たところです。
室内の照明できれいに照らし出されています

ステンドグラス制作者の「ぎやまん草子(その8)」 「誰が見る」” への2件のコメント

  1. いえいえ、昔イギリスにいた頃、「ステンドグラスは昼間は家族の為、夜は道を歩いている人の為」って聞きましたよ

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