ステップK4:焼成

 【重要事項】
 窯の設置方法や操作方法、安全遵守については、製品に付いている取扱い説明書に従ってください。 また、このコースの記述に従って操作する場合は、自己責任でお願いいたします。 万一、事故・負傷・失火・その他の問題が起きた場合、グラス工房達風はなんら責任を負うものではないことをご承知おきください。 このコースの記述と、取扱い説明書との間に矛盾がある場合には、取扱い説明書に従ってください。
 《1》 仮止めの確認
 仮止めしたタイルは、室温で約1日放置し、フュージングのりを完全に硬化させます。 この状態なら、多少の振動や輸送に耐えます。 下図のように、裏返して軽くピースを叩き、落下するピースが無いことを確認して下さい。
フュージングのりを完全に硬化
 《2》 電機窯について
 この講座で紹介する、外形が8角柱形で、外寸法:幅57cm×高さ35cm程度の中型電気窯は、フュージングの焼成はもちろん、 グリザイユの焼成、スランピングやパート・ド・ヴェールなど、ガラス工芸に広く用いられています。 米国製の普及タイプで、本体が20万円台と決して安くはありませんが、とても重宝する窯です。
 この窯のような中型電気窯は、使用電力は単相200v・13A以上が多く、設置には電気工事店などの有資格者があたらなければなりません。 最近の住宅は、配電盤までは単相200vが来ていることが多く、案外簡単に導入できます。 とは言っても、3kW近い高出力ですから、十分な安全配慮が必要です。
   ここでは、スカットキルン社のオクタゴンという窯(単相200v・13A、生産終了品)を使って、焼成方法をご紹介します。 この窯は内部が、幅445mm×高さ230mmの8角柱です。 ただし、現在はこのオクタゴンが国内で販売されていないので、実際に購入する時は、 同じスカットキルン社のGM814(品番84024)がこれに近いと思います。 この窯は、サイズがオクタゴンとほぼ同等ですが、電熱線がサイド&トップファイヤー(後述)で、200V・31Aと、かなりのハイパワーです。 また、コンピュータ付ですので、焼成は自動で出来ます。
 また、このオクタゴンよりは二回りほど小さく、内寸法が30×30×15cm程度、 家庭用コンセントの100v・15Aが使える電気窯も数種販売されています。 スカットキルン社のホットスタート(品番84025)や、FB-14(品番84027)がこれにあたり、 コンピュータ付で値段も20万円以下と比較的手頃です(付記の道具と材料一覧参照)。
スカットキルン社のオクタゴン
 《3》 温度プロセス
 フュージングの焼成には、アクセサリーなどの小物の制作を除き、普通、温度制御用のコンピュータ(プログラムコントローラ、 温度調節計とも言う)が必要です。それは、主に冷却過程で「徐冷」という複雑で厳密な温度管理が必要だからです。
 ガラスは急激に冷やすと、内部に温度ムラが生じ、常温でも歪が残ります。 この状態の作品は、わずかな衝撃でも壊れる、もろいものとなります。 徐冷で特に大切なのは、530℃付近の「徐冷点」と言われる温度帯です。 ここでは、数十分〜数時間ほど、この温度をキープする必要があります。
コンピュータ
 この徐冷こそが、フュージングを難しくしています。作品が大きいほど、内部に温度ムラができやすいので、キープ時間は長くなります。 また、冷却の速度も遅くする必要があります。下図は、この課題作(フュージングタイル)の温度曲線です。
 焼成をスタートすると、1時間40分の比較的高速で、最高温度の770℃まで上げます(ステップ1,2)。 770℃を8分間保持し(ステップ3)、530℃まで急降下させます(ステップ4)。 徐冷点の530℃を50分キープし(ステップ5)、500℃まで40分間で下げ(ステップ6)、500℃を50分間キープします(ステップ7)。 最後に400℃まで徐々に下げ(ステップ8)、電源をOFFします。これを8ステップの温度コントロールと言います。
温度プロセス
 《4》 焼成
 さて実際の焼成作業です。窯内部の棚板の上に作品を置くわけですが、直に置かずに、 間にセパレートペーパー(セラフォーム)という離型紙を敷きます。 これは、使い捨てのセラミック繊維製の紙で、棚板にガラスがこびり付くのを防ぎます。 セパレートペーパーはハサミで簡単に切れますので、作品より一回り大きいサイズに切って使いましょう。
焼成準備
 蓋を閉めて、あとはコンピュータに任せます。焼成が済み、内部が100℃以下になったら蓋を開けても構いません。 その間、約10時間です。 下図はちょうど最高温度の770℃の窯内部です。
最高温度の770℃の窯内部 最高温度の770℃の窯内部
 この最高温度の決定は重要で、窯を最初に買った時、あるいは使うガラスの種類を変えた時などに決める必要があります。 この場合、最高温度付近で時々蓋を開けてガラスの様子を見て決めます。ガラスの角が取れて丸くなり、融け過ぎない温度を見つけ出します。
 《5》 焼成完了
 常温になったら、作品を取り出して、付着した離型紙を水で洗い流し、完成です。
完成 完成

前へ 次へ


■写真はクリックすると拡大表示されます■