ステンドグラス制作者の「ぎやまん草子(その20)」 「倹約紀行(一)」

平成19年春、妻と、フランス、ベルギー、ドイツと巡るステンドを観る旅をしてきました。貧乏旅行でしたので、飛行機は往復8万円の格安チケット、移動は電車と現地友人のマイカー、宿泊はユースホステルや友人宅でした。それでも有名どころの大聖堂を確り巡り、牧歌的な田舎町で、久しぶりに再会した友人達と現地B級グルメを堪能してきました。

初日はパリのユースに泊まり、次の日から強行軍です。夜明け前から電車に乗りこみ、一時間ちょいでモンタルジーという町に着き、アトリエマツダへ向いました。ここは私と妻が、時期は異なりますがかつてステンドを習った所です。主宰の松田日出雄氏は私達にとって隠れた仲人と言えます。氏は現在も弟子を抱えつつ教会ステンドの修復や個展などを精力的にやっています。先生お手製のざる蕎麦をご馳走になった後お別れし、乗り合いバスでモンタルジー市街の教会へ。ここには日本の武士を題材にしたとても珍しいステンドグラスが入っていました(写真 下)。

モンタルジーという町の教会の日本風ステンドグラス

パリの南部、モンタルジーという町の教会の日本風ステンドグラス

次にシャトー・ルナーという森に囲まれたおとぎの国のような村へ移動しました。ここの丘にそびえる古城のような教会には、その外見とは不釣合いと思える前衛的な抽象絵画のようなステンドがはめ込まれていました。その中には松田氏の作品もあり、日本人作家がフランスの田舎に根を下ろし、愛されていることを誇らしく思いました。
この日の宿泊は妻の友人コーブ夫妻宅(写真 下)。公務員を退職したムッシュとマダムはパリからこの田園に移り住み、ボランティアで外国人にフランス語を教えています。私はビズという抱き合って頬を当てるキスを妻相手に練習しておいたので、マダムとはぎこちなくも篤い挨拶を交わせました。ところが、ムッシュには無視されてしまい、空しく突き出した顔を引っ込めるののばつの悪いこと。彼は男とはしない主義のようです。

晩は、フォアグラ、サーモン、シャンパン、貴腐ワイン、シャブリー、ボルドー、リンゴパイのお手製のフルコースでした。このお宅にはフランスには珍しく浴槽があったのですが、浴室が普通のリビングのようなのです。日本では洗い場に相当する所に、絨毯やらタンスやら人形やら、小物が所狭しと並んでいると思ってください。入浴時、床やそれらの調度品を濡らさないようにするのに苦心しました。結局この旅行中、浴槽に出会えたのはここだけでした。翌日、別れ際にあのムッシュが確りビズをしてくれて、少し胸が熱くなりました。(続く)

コーブ夫妻宅にて

コーブ夫妻宅にて

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