ステンドグラス制作者の「ぎやまん草子(その18)」 「三月四月」

三月から四月にかけて、日本人の心は揺れ動きます。花粉症の話ではありません。三月は卒園、卒業、受験、送別、四月は入園、入学、進級、就職、赴任など。別れと出会いの季節でもあります。この時期の気持ちを言葉にするのは難しいですね。悲しいとか辛いでもないし、嬉しいとか楽しいでもない、不安と期待とが同時期に入り混じった、まさに「なんとも言えない感覚」です。

最近、自分に変化が訪れなくなったせいか、落ち着いて渦中の人たちを観察することが出来ます。先だっても、卒業式でもらったのか揃いの小さな花束を手に手に、中学生の一団が道にあふれていました。自分の卒業式の日を思い出しました。ただもう春休みに作る予定のスピーカー・エンクロージャー(オーディオスピーカーの木の箱)のことで頭がいっぱいだったあの時。もう少しおセンチになって、二度と会えなくなる友達と遊ぶ約束をすればよかったなどと後悔します。

四月になると、蛍光色のカバーを付けたランドセルが朝の団地内に湧き出ます。少し離れたところからそのランドセルに注がれる篤い眼差し。私の母もそうだったのだ。でも当時の僕は、算数の教材セットや、通学路に落ちている色々なものが気になり、母親の思いなど気にも留めませんでした。

ホームで電車を待つリクルートスーツ。内定もらえて良かったね。どこでも好きなところに就職できたバブル組みの僕は、長く厳しい就職活動を乗り越えた彼らに敬意を表します。でも、君達は少子化で受験の方は楽だったんじゃないかな。僕は思い出したくないくらい辛かったです。だからおアイコですね。

ある方が、感情は言葉の数だけある、という意味のことを仰っていました。三月四月の感情を一言で表すと何でしょうか。

ステンドグラス「染井吉野」

ステンドグラス「染井吉野」
サイズ:W94cm×H50cm

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