ステンドグラスに興味を持ち、初めてそれらしいモノを作ったのは高校生のときでした。黒く塗ったボール紙にカッターナイフで孔を開け、そこに色セロファンを貼って作りました。題材はギリシャ神話です。一枚は、英雄イアーソーンが金毛の羊皮を取りに行く冒険物語の一場面、もう一枚は、テーセウスが牛頭人身のミーノータウロスと戦っている場面です。前者はクラシックなストップモーションの映画を観て、後者は当時の愛読書・高津春繁著「ギリシャ神話」の挿絵に惹かれて作りました。
ギリシャ神話は日本の神話に共通するところが多く、カオスから始まる神々の系譜や、後世の貴族たちが英雄や神々を祖先として祀った点などは、記紀にも多く見られます。しかし日本と違うのは、ギリシャを旅した時実感したのですが、太古の神々を祀り崇める現役の施設も人も、今や無い、ということです(地方ではほそぼそと残っているかもしれませんが)。現在は国教ギリシャ正教を主とした完全なキリスト教国になっています。多くの神社や神話上の神神が今なお息づいている日本や、東南アジアの多神教国に比べると、実にさばさばした見捨てぶりです。
あのセロファンのステンドグラスから二十年以上経って、本物のガラスでギリシャ神話を描く機会に恵まれました。当時は英雄伝説にあこがれていましたが、今回はもう少しロマンチックな題材を選びました。出典は『アイティオピス』という叙事詩で、粗筋は、次のとおりです。アマゾーンの女王ペンテシレイア率いるアマゾーン軍は、トロイエー軍の援軍として敵対するアキレウスと戦っていました。が、ついにペンテシレイアはアキレウスに胸を刺されて討たれます。アキレウスは、死にぎわの女王の顔があまりにも美しかったので、一瞬で恋におちます。当時の英雄は、簡単に恋に落ちるんですよね。
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