付記1.マスカットのランプ(旧《前頭》コース課題作)の制作

 《1》 概要
 旧《前頭》コース課題作だった、マスカットのステンドグラス・ランプについて、概要を説明します。 グリーン基調のシンプルで、お洒落なランプです。
制作時の目安
工具一式で4万5千円程度(ルーター無しでは2万5千円)
ガラスを含む消耗品実使用分:6千円程度(ランプベース含む)
詳しくは最終章(工具と消耗品一覧)ご参照
制作時間8〜12時間
課題作
 《2》 モールドと型紙
 今回のステンドグラス・ランプシェード(傘)は、12角柱の形をしています。 このシェードを作るためモールド(型)は、適度な大きさと硬さが必要です。 12角柱のモールドが必要だと思うかもしれませんが、円筒でも十分代用可能です。 例えば、茶筒やラップの芯でもいいですが、今回は、直径約8cmのボール紙の筒がありましたので、 これを使うことにします。 硬い紙などで自作してもOKです。
 モールドが決まったら、メジャーで外周長を計ります。このモールドの実測値は249mmでした。 この数値を元に、デザインします。 実測した外周長249mmに5〜10mmプラスした値を、展開図の周長とします。 なぜプラスするかというと、円よりそこに外接する12角形の方が、少し長さが増すからです。
ステンドグラス用モールドの外周測定
 下の原画をクリックして型紙を拡大表示し、適宜印刷・拡大・縮小コピーしてご利用ください。
型紙
 型紙を作るために、図案のコピーを2枚とります。1枚は組み立て用で、切らずに使います。 もう1枚はガラスカット用で、ピースに切り分けます。
型紙の切り分け
《3》 ガラスの選択例
 以下に示す2種類のアンティークガラスを使用します。 ですが、なにぶん高価なガラスですし、なかなか手に入らないので、 ステンドグラス制作は初めてで、遠慮したいとご希望の方には、 廉価なガラス(ブルザイ社)の組み合わせも併せてご紹介します(下表参照)。
 アンティークの場合、オパックはAL-UJ196、トランスペアレントはAL-H3302です。オパックはオパールセントの一種ですが、 2層構造(被せガラスやフラッシュガラスとも言う)でカットが非常に難しい上に、高価です(30×30cmあたり6,500円)。 一方、ブルザイ社のBU6212というガラスは、リングモトルと言う独特の輪模様がある美しいガラスです。 こちらを使用しても、十分満足いただける素敵な作品に仕上がります。
記号ガラスの種類 高級ガラスの例
(メーカー、型番)
廉価ガラスの例
(メーカー、型番)
購入面積
(元版に対する)
オパールセント(オパック)のグリーン ランバーツ、
AL-UJ196
ブルザイ、BU62121/4
トランスペアレントのグリーン ランバーツ、
AL-H3302
ブルザイ、BUF11451/4
課題作に用いるアンティークガラス
 《4》 ケガキ
 次に、並べた型紙の縁に沿って、ガラスにペンを入れていきます。この線がカットラインになりますので慎重に。 この作業は「ケガキ」と言い、型紙がずれないように左手で押さえながら、油性マーカー(マジック)で写し取ります。
型紙の縁に沿って、ガラスにペンを入れていきます
 《5》 ガラスカット〜ルーター
 ケガキ線の上ではなく、内側を切りますので、≪十両≫コースの本編を参考になさってください。
 《6》 コパーテープ巻
 全ピース、普通に巻いてください。
 《7》 ハンダ作業のガラスピースの固定
 モールドには、予め、組み立て用型紙を貼り付けておきます。
 また、作業能率を増すために、モールド台座治具(じぐ)が必要です。 この治具は、効率よくハンダをするために必要です。 ダンボールなどを利用して、モールドが机に安定にかつ水平になる治具を作っておきましょう。
 ガラスピースをモールドに固定する為に、輪ゴムを2本掛けます。 この輪ゴムの内側に、ガラスピースを並べます。この時、ピースとピースは密着させて配置します。 その結果、ガラスが小さすぎて、最後のピースと最初のピースが密着しないかもしれません。 逆に、ガラスが大きすぎて、モールドとガラスの間に隙間が出来てしまうかもしれません。
 前者の場合、そのままハンダ付けして、最後にモールドを引き抜いたとき、最後のピースと最初のピースを密着させます。 後者の場合、隙間に厚紙など入れて、がたつかないようにして、ハンダ作業を進めます。
輪ゴムの内側に、ガラスピースを並べます
 《8》 点止め
 点止めは、ハンダを点で付け、ピースが動かないように仮固定する作業です。 利点は、後でピースの位置を動かしたいときに、外しやすいということです。
 隣接するピースを密着させた上で、2箇所にフラックスを塗り、 ハンダを点で盛っていきます。この作業を全ピースについて行います。
 今回、最後のピースと最初のピースが密着せず、5mm近い隙間が生じてしまいました。 ですが、気にせず進めます。
密着させて点止めします 最後と最初のピースの間に生じた5mm近い隙間
 《9》 本ハンダ
 ハンダを盛ろうとしている部分を、頂上に持って来て、かつ机に水平にします。
 フラックスをテープと周囲のガラスにも塗り、隙間に充填するようにハンダを流し込んでいきます。 さらに、ハンダがこんもり盛り上がるようにします。輪ゴムがかかっている部分は後回しで結構です。 一直線上にゆっくり連続的に作業すると、皺の無いきれいなハンダ線になります。
流れ作業で仕上げ
 《10》 モールドの引き抜き
 最後と最初のピースが密着せず、5mm近い隙間が生じている部分を除いて、他の隙間の本ハンダが終わったら、モールドを引き抜いて、 シェードを管状に繋ぎます。
 この最後の繋ぎ目を上にして、ハンダするわけですが、あらかじめ管の中に短冊状の紙を入れておきます。これは、万一融けたハンダが 下のピース上に落ちると、熱で割れてしまうからです。
 シェードを手でつぶすように寄せて、まず点止めします。次に本ハンダで、隙間を埋めます。
最終の隙間にハンダして管状に繋ぐ
 《11》 管の内側
 ゴムをはずして、この部分にハンダを充填します。また、シェードの内側にもハンダを盛ります。
シェードの内側にもハンダ
 《12》 縁の処理
 最も難しいのが縁のハンダ処理です。まず、縁にフラックスを付けて、薄くハンダをつけます(ハンダメッキ)。 次にシェードを柱状に立てて、慎重に縁にハンダをのせていきます。
 表面張力で丸く高く盛る要領です。ハンダコテのスイッチをマメに入り/切りすることで、コテ先温度を低めにして維持して、 ハンダの粘性を増してやると、作業がしやすいです。縦の線との交点も、段差が生じないように、時には水平に向きを変えて仕上げます。
表面張力で丸く高く盛る
 《13》 フックをつける
 最後にステンドグラスシェードをベースに吊るすための金具であるフックをつけます。 フックの材料は、直径1mm程度の真鍮棒を用います。 これを、まず紙やすりでよく磨きます。次にループ(環)を作ります。 ペンチで加工して、シェードの内径に一致するフックを作ります。
 フックの両端はシェードの内側にハンダで固定されます。 シェードの縁に対するループの位置は、ベースにぶら下げたときに、シェード下端がベースに接触しない位置で決めます。
フックの両端の加工 シェードの内側にハンダで固定 ハンダ付け終了
 《14》 洗浄〜ワックス処理
 本コースの本編を参考になさってください。

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