特    色

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【1.ステンドグラスの構造(一般論)】

 ステンドグラスの構造(作り方)には、大きく分けて2種類が有ります。 一つは「鉛線(レッドケイム)技法」、もう一つは「銅テープ技法」です。 ステンドグラス工房達風では、その両方の技法を使っていますが、1:9の割合で後者の方が多いです。

 まず、鉛線技法の構造から説明します。 トップページでも触れていますが、ステンドグラスが本格的に作られ始めたのは、中世ヨーロッパです。 その当時から今日まで、その構造の主流は鉛線技法です。 ガラス片を断面がH形をした鉛線で組み立てて、1枚のガラス絵に仕上げます。 この構造の特徴は、鉛線の太さが5〜10mmと太いため、ガラス片をあまり細かく出来ないことです。 ですので、繊細な絵画表現をするために、 ガラス片にグリザイユという酸化金属とガラス粉を混ぜた顔料を使って絵付けをするのが普通です。 この作業が所謂「ステイン(stain)=着色する、汚す」に相当し、ステンドグラスの語源にもなっています。

鉛線技法ステンドグラスの拡大
鉛線技法ステンドグラスの断面
鉛線技法

 一方、銅テープ技法は、19世紀の後半から始まった、比較的新しい技法です。 この技法を発明したのが、ティファニー2世(ルイス・カンフォート・ティファニー)です。 この構造の特徴は、ガラス片を繋ぐ金属として、鉛線ではなく、太さが2〜3mmと細い半田線を使っている点です。 そして、この半田線の縁取りだけで、かなり繊細な絵画表現が可能になり、 必ずしも絵付けを必要としなくなりました。
 半田はガラスには付着しないので、ガラス片の縁に、予め半田と親和力の強い銅のテープを巻いておきます。 ですので銅テープ技法と呼ばれています。 ちなみにこの銅テープは、半田を流した後にはすっかり隠れて見えなくなります。

銅テープ技法ステンドグラスの拡大
銅テープ技法ステンドグラスの断面
銅テープ技法

 上記の2通りの構造以外にも、最近はダル・ド・ヴェールというステンドグラスが注目を浴びています。 これは厚さ2〜2.5cmもあるダルというガラスを、ハンマーや電動鋸で分割し、エポキシ樹脂で繋ぐものです。 上記2種類のステンドグラスが、鉛もしくは半田という鉛合金で出来ているので、風雨に曝されると腐食しやすいのに比べ、 ダル・ド・ヴェールは、比較的耐環境性が強く、屋外向けです。
 ガラス表面をハンマーで削って、貝殻のような剥がれ模様を施しておくと、ここを通る光が複雑に屈折し、とても美しいです。 ステンドグラス工房達風でも、郵便ポストや慰霊廟など、風雨に曝される作品にこの方法を取り入れています。

 また、この技法以外にスランピング(熱で板ガラスを湾曲させる技法)やフュージング (窯でガラスを融かし、混色する技法)も取り入れて、当工房のステンドグラスは作られています。

新しいステンドグラス ダル・ド・ヴェールの拡大
新しいステンドグラス
ダル・ド・ヴェール技法

【2.ステンドグラス作家=画家になる決意】

プロフィールページでも書かせて頂きましたが、私(福田勝司)は、 「ステンドグラス作家たるもの一流の職人でなければならない。 それ以前に画家でなければならない。」 と思っています。 ステンドグラス作家自身に、ガラス工芸なのだからデザインが少しぐらいマズくてもしかたない、 という気持ちがあるとすればそれは甘えです。
 私にとってのステンドグラスは、絵を描くことと同じです。 もともと、ステンドグラス作家になる前は、アマチュア画家として、油絵やエアブラシの絵画を描いていました。 絵を描き始めた時期は、記憶にないほど幼い時からで、常に画用紙に絵を描いていた記憶が有ります。 学生時代も、メーカーのサラリーマン時代も、家に帰ってくると描きかけの絵がイーゼルに載って待っていました。 ですので、独立はステンドグラス画家になる決意で、実行しました。

20歳台で書いていた油彩画
20代で描いていた油彩画の1枚「庭」

【3.ステンドグラスの絵画性】

 恐らく、ガラス工芸は、工芸家が行うもので、絵描きが行うものではないと思われるのが普通でしょう。 しかし、ステンドグラス職人は歴史的に言って、絵描きの要素が強いですし、 特に今、ヨーロッパではその自負で制作している方が多いです。 私はフランスの例しか知りませんが、彼らの作業場はスタジオ(工房)ではなく、アトリエと呼ばれています。 また、ステンドグラス(stained glass)の語源のstainは、着色するとか、塗る、汚す、といった意味が有ります。 もともとステンドグラスは、ガラスにキリスト教に関する絵を描くことが大切な要素だったからです。 近年有名なステンドグラス作家にマルク・シャガール(1887年〜1985年)がいます。 もちろん画家として有名ですが、数多くのステンドグラスも制作しています。 私もフランスはランスの大聖堂に、彼のテンドグラスを見に行ったことがあります。 ブルー基調で、とてもこってりと絵付けされた重々しい、それでいて洗練された美しい作品でした。 彼は、ステンドグラスの組み立てなどは他の職人に任せ、もっぱら、絵筆を取ってグリザイユという専用の顔料で絵を描きました。
 私はステンドグラスをインテリアや雑貨としてではなく、「絵画」として制作したいのです (もちろん、インテリアや雑貨を低く見ているわけではありません、念のため)。

鉛線組みの絵付けステンドグラス「銀河鉄道の夜」
私の鉛線組み絵付けステンドグラス 「銀河鉄道の夜」

【4.達風流ステンドグラスの技法】

 私も、私を手伝ってくれている妻も、フランスで伝統的な絵付けステンドグラスを学びました (もちろん、構造は鉛線組みです)。 習作は、もっぱら教会のステンドグラスの模写でした。 ですが、日本に帰ってきて、このスタイルは封印しました。 その代わり、ヨーロッパステンドグラスのエスプリのみを自分の作品に採り入れることにしました。
 具体的には、ステンドグラスのデザイン上重要な役目をする、つなぎ目の金属線を、鉛線(5〜10mmと太い)ではなく、 銅テープ技法の半田線に切り替えました。 この太さ2〜3mmの繊細な線で、絵としての輪郭を描くので、グリザイユでの輪郭の描きこみが不要になります (右写真 ご参照)。 そして、ガラス素材が持つ艶や、気泡、揺らぎなどの美しテクスチャ(質感)をなるべく前面に出すようにしました。 別の言い方をすると、絵としての説明は全て半田の輪郭線に任せ、 ガラス面は色と全体の雰囲気を伝えるだけの要素としました。 この方が、断然私好み、そして日本人好みの画面になると思ったからです。

繊細な半田線のステンドグラスの一部
繊細な半田線のステンドグラス(部分)

【5.アンティークガラスの使用】

 ステンドグラス工房達風で使用するガラス素材は、90%がアンティークガラスです。 アンティークと言っても、製法がアンティークな手吹き(宙吹き)技法であるという意味であって、ガラスは新品です。
 私は2000年、フランスが誇るアンティークガラスメーカー、サンゴバン社Saint-Just工場に見学に行ったことが有ります。 腕っ節の強そうな大柄な職人達が、竿の先に1000℃以上に熱せられたガラス玉を着け、 これを回転させ、さらにぶんぶん振り回しながら竿に息を送り込み、 直径50cm、長さ1mほどのビール瓶のようなシリンダーを作っていました。 実は私も、この手吹きガラスを体験したことが有ります。ですが、普通に吹くと球になってしまうのです。 そして、なかなか均一な厚さになりません。
 球ではなくて円筒に仕上げる、しかも数メートルの長さの竿の先に、重いシリンダーを付けて操るなど、神業だと思いました。 このシリンダーは冷えてから、頭と尻尾を切り落とされ、縦に切り線を入れられます。 そして、再度窯の中で、イカの刺身のように長方形に伸されます。この板ガラスが、はるばる海を渡って日本にやってきます。
 ちなみに、このSaint-Just工場のマネージャーさんが言うには、ステンドグラス用のガラス以外に、 ヨーロッパ各地にある古城の窓ガラスも復刻して提供しているそうです。なんでも、それぞれのお城の地元の砂の成分に 合わせて、ガラスの材料も調合しているそうです。全部、私の師匠松田日出男先生が通訳してくださいました。
 アンティークガラスの見た目の特徴は、ライン模様と気泡です。そして、厚さの不均一から生じる程よい揺らぎです。 当工房では、サンゴバン社以外にも、ドイツのアンティークガラスメーカー、ランバーツ社のガラスも使用しています。 これら高価なガラスが持つ美しさを、損なわないように、大ピースと小ピースを程よく配置してデザインしています。

サンゴバン社サンジェスト工場の入口
ステンドグラス用アンティークガラスのサンゴバン社Saint-Just工場にて(私)

アンティークガラスの独特なテクスチャ
アンティークガラスの独特なライン模様と気泡

【6.和風ステンドグラス】

 現在、デザインは大きく分けて2通りのスタイルに力を入れています。 別の言い方をすると、この2通りのスタイルは、他の多くの作家さんにない達風作品の特色=画風だと思っています。 その1つは、水墨画風の和風ステンドグラスで、もう一つは、モノトーンの人物画ステーンドグラスです。

 水墨画風ステンドグラスを作るようになったきっかけは、ちょうどステンドグラスを作り始めた頃、 同時に水墨画と書を始めたことに由来します。東京在住の書画家:鈴木桂石氏に師事し、修業を始めました。 ちなみに鈴木氏は、(故)内山雨海先生の高弟でも有ります。
 それまで私は、油彩画やエアブラシ、鉛筆画の絵を独学で描いていましたが、水墨画はこれらとは決定的に異なりました。 その一つは、筆を動かす速度が、画面に大きく影響するということです。 速く動かせばカスれ、ゆっくり動かせば滲みます。これは、思考より速く腕を動かす必要があることを意味します。 今まで、独学でやっていた油彩画や鉛筆画は、ゆっくり思考しながら、時には消したり修正したりして、描く事ができました。 これを言うと、本職の油彩画家に怒られるかもしれませんが、修正可能な油絵は、素人に向いていると思います。 しかし、水墨画は体で覚える必要が有ります。ですので、名人について間近で観て、素直に教わる道を選びました。

 水墨画の魅力は、見る人の脳の中で、墨の濃淡が七色に変化する点だと思います。 画面の殆どがモノクロであるにも関わらず、実に豊かで、リアルです。
 この水墨画の持つ即興性とリアリティをステンドグラスに取り込む努力を続けています。 実は現在、オーダーメイドの半数以上は、この水墨画風の和風ステンドグラスが占めています。 制作前には墨を磨って和紙に向かい、原画を描きます。水墨画は慣れてくると、とても速く描ける手段でもあります。 もちろん、その前段階として、モチーフになる草木、花、鳥のスケッチはしますが、その素材がそろっていれば、 水墨画は1日で数枚描けます。この絵をスキャンして、お客様にご提案させてもらっています。
 現在、この和風ステンドグラスは、3階調のグレーガラスを使い、背景はクリア、そして花や実の部分に差し色として 赤や黄色、紫などを入れています。

原画を水墨画で描いているところ
ステンドグラス作品の原画を水墨画で描いているところ

和風ステンドグラス「枇杷」
和風ステンドグラス「枇杷」

【7.人物ステンドグラス】

 もう一つの代表作風はモノトーンの人物作品です。 人物作品のご依頼を受けますと、多くの場合、私の方でまず物語を選定します。 と言いますのも、人物はほぼ100%が女性像、そして裸婦が多いのです。 裸婦を描く場合、背景になる物語があった方が、鑑賞者の心理に訴えるものがあり、お客様からも歓迎されます。
 絵画史上の定説でも、古典的な絵画では裸婦は重要でポピュラーなモチーフであったにも関わらず、 裸になりえる女性は、神話や伝説上の神や人物に限られていました。 私の作品でも、特段のご要望がない場合にはその手法を採らせてもらっています。

 私は、高校生のときからギリシャ神話が好きでしたので、この神話から題材を採ることが多いですが、 イギリスのゴディバ婦人の物語や、北方ヨーロッパのワルキューレに纏わる物語なども、 細部まで調べて題材としています。 今は、本当に便利な時代です。インターネットを使って、居ながらにして取材できます。 当時の風景や衣装、文化なども知ることができます。ですので、取材は手を抜かず、説得力のある物語を 画面に描こうと思っています。

 人物ステンドグラスのもう一つの特徴は、モノトーンでまとめているという点です。 写真の「レディ・ゴディバ」は青緑、「アテナとニケ」はオレンジが基調です。 この2色にこだわるわけでは有りませんが、比較的この2色が多いです。 モノトーンにすると、画面が上品になります。 ドラマテッィクな画面でありながら、落ち着きが出ると思います。 日本の家屋に施工する場合、特に落ち着いた作品ということが大切になります。 お客様は最初、「人間が緑なんて変じゃあ有りませんか」と尋ねられますが、 納品後はご納得頂けますし、大変ご満足くださいます。

 次の章では、人物では有りませんが、妖精とストレリチア(極楽鳥花)をモチーフにしたステンドグラス の作り方をご紹介しています。そちらもゆっくり読んで頂きたいと思います。

【8.「命」を描く】

 私は、「愛・平和・自然のステンドグラス」をキャッチフレーズに、 自然の動植物や、生身の人物をモチーフに多くの作品を制作してきました。 多い年では、1年に大小含めて80以上作らせて頂きました。 そして、そのモチーフを通して「命」そのものと「命」の尊さを伝えたいと思っています。
 これを絵の具で描くよりずっと困難なガラスという素材を使って表現しています。 ただ単に、窓ガラスを彩る色ガラスを作るというのではなく、メッセージ性のある絵を描きたいと思っています。 これは、宗教画でもあったステンドグラスが伝統的にもっている使命だと思いますし、尊重したいです。

 ステンドグラスがカンバスに描かれた絵と大きく異なる点は、光を放つということだと思います。 光は暖かくも有り、攻撃的でも有ります。 日々浴びる光の量や波長によって、健康や心理は様々な影響を受けます。 やさしく心身ともに健康になる光の芸術を作りたいと思っています。

 そして、モチーフの命を出来る限り忠実に写し取るために、ご注文の有る無しに関わらず、常にスケッチブックを 持ち歩いて、デッサンしています。裸婦のデッサンも折に触れて行っています。 本物に触れて初めて活きた絵が描けると思います。

レディ・ゴディバ
悲劇のヒロイン「レディ・ゴディバ」

ギリシャ神話から「アテナとニケ」
ギリシャ神話から「アテナとニケ」

普段から描き貯めているスケッチ
普段から描き貯めているスケッチ


ステンドグラスの制作工程

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 作品「ストレリチア」(74×110cm)の制作を通して、達風流の制作スタイルを紹介します。

 《1》モチーフのスケッチ

モチーフの花「ストレリチアのスケッチ」 葡萄を、水墨画で描いているところ

 私がステンドグラスの原画を作成に当たって最も大切にしていることは、モチーフの「命」を写し取ることです。 ですので、動植物をモチーフにする時は出来る限り、実物を目の前に置いて、写生をします。 人物の時はモデルのデッサンをします。
 それは、「ステンドグラスがガラス工芸である前に、絵画である」という意識で制作しているからです。
 和風ステンドグラスの場合、水墨画で原画を描きます。勢いのある活きた線質を大切にしながら、描きます。 ステンドグラス制作の全工程の中で、最も緊張する時ですが、墨の偶発性の面白さは、他には無いものです。 墨の他にも、色鉛筆や、水彩画で原画を描くこともあります。

 《2》原画と型紙

ステンドグラス「ストレリチア」の原画と型紙 水墨画で描いた「イチジク」の原画

 これから制作風景を紹介する作品「ストレリチア」では、原画は色鉛筆で描きました。 写真の上段が「ストレリチア」の原画と、原画を元に描いた型紙です。 この型紙はA3のサイズしか有りませんので、実際に制作するときは、完成品の大きさまで、拡大コピーします。

 写真下段は、他の和風作品「葡萄」の原画で、水墨画で描いています。

 《3》ガラス素材

サンゴバン社サンジェスト工場の入口 アンティークガラスの独特なテクスチャ

 達風流では、ステンドグラスのガラス素材として、アンティークガラスという宙吹きの板ガラスを用いています。 製造元は主にドイツのランバーツ社と、フランスのサンゴバン社です。 このうちサンゴバン社には、実際に製造現場を見に行きました(上段の写真には、私が小さく写っています)。

 アンティークガラスは、1枚1枚職人が手作りします。 ガラスの厚さは必ずしも均一では無く、歪みも有り味わいが有ります。 表面には美しい線模様、内部には気泡が入り、素材でありながら1個の工芸品のようです。 この世界一高価と言える板ガラスを丁寧に切って、ステンドグラス・ピースに整形して行きます。

 《4》ガラスのカット

型紙をガラスの上に効率よく並べ、型紙外形をガラスにマジックで写し取る「ケガキ」 ガラスカッター(オイルカッター)とプライヤーという工具を使って、カットします

 型紙はピースごとに、ばらばらに切っておきます。 これをアンティークガラスの上に、効率よく並べます。そして、型紙外形をガラスに油性マジックで写し取ります。 この作業を「ケガキ」と言います。

 1枚のガラスに全てのピースのケガキをしたら、このケガキ線を頼りに、 ガラスカッター(オイルカッターとも言います)で、ガラス表面に傷を付けます。 次に、プライヤーを用いて、傷に沿ってガラスを割っていきます。

 こうして、型紙より若干小さいガラスピースを切り出していきます。

 《5》ガラスの研磨

ルーターと言う回転砥石で、ガラスの縁を研磨しておきます

 カットしたばかりのガラスの縁は鋭く尖っていて危ないので、ルーターと言う回転砥石で、研磨しておきます。 ルーターはダイヤモンドの細かい粒子が融着してある砥石(というよりヤスリ)をモーターで回転させて、ガラスを削る工具です。 周囲の角を落とすと同時に、若干のざらつきを残すので、あとの工程で、銅テープが着き易くなります。

 また、ルーターを使えば、複雑な整形も出来ます。例えば、ガラスを割るとき凹カーブはなかなか上手に割れません。 何故ならば、ガラスは直線状に割れたがる性質があるからです。 このような時でも、ルーターで地道に削り込むことで、かなり深い凹カーブが作れます。

 《6》絵付け

バジャーという大きな刷毛を使い白いグリザイユで、うっすら絵付け 電気窯で焼成

 ステンドグラスの"stained"は、「汚された」「色付けされた」という意味です。 本来のステンドグラスは、グリザイユという特別な顔料で絵付けをして、 これを高温の窯で焼成してから、組み上げます。
 ただ日本では、絵付けステンドグラスはあまり好まれないようです。 達風流でも、典型的な絵付けステンドグラスは少数でが、一見絵付けに見えなくても、 ガラスに磨りガラス効果を持たせたり、テクスチャに面白みを持たせるために、ガラスの裏面に薄く絵付けすることはあります。
 「ストレリチア」では、妖精と植物のピースに、白いグリザイユで、うっすら絵付けしています。 バジャーという大きな刷毛で丁寧にグリザイユを伸ばし、絵付けします。 その後、10時間ほど掛け、625℃で焼成します。

 《7》銅テープ巻き

銅テープ巻き

 ステンドグラスの構造は、大きく分けて2種類あります。これは、組み立て方の違いとも言えます。

 1つは伝統技法で、ケイム組み、鉛線組みとも言います。 これは、断面がH型した鉛線(レッドケイム)を使って組む方法で、中世から続いています。

 もう1つは、コパーテープ技法です。コパーテープ=銅テープをガラスの縁に巻いておいて、 この銅テープ同士を半田で繋いで組み立てます。 ルイス・カムフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany、1848〜1933年)が約100年前に発明した方法です。

 前者は、教会のステンドグラスのように、個々のピースが大きくて、絵付けされたパネル作品に向いています。 後者は、ピースが小さくても組みやすく、パネル作品にも、ランプのような立体作品にも向いています。 [ストレリチア」では、テープ技法を用いました。

 《8》組み立て

コパーテープ技法の組み立て風景:半田付け ケイム組みの様子

 写真上段は、コパーテープ技法の組み立て風景です。ピースとピースの境目には、銅テープが巻かれているので、 ここに半田を流し込みます。半田は、ガラスには着きませんので、コパーテープに添って、半田線が出来ます。

 この時、組み立て時の半田線の美しさが問われます。 半田はこんもりと高く盛ることで、強度も持たせます。

 写真下段は、別の作品での、ケイム組みの様子です。ケイムの溝にガラスピースを差し込むようにして、組み立てます。

 《9》補強

補強用の真鍮製のH鋼を磨いているところ 真鍮製のH鋼で作品周囲を囲みます

 ステンドグラスの特に大判のパネルは、補強をしないと、 輸送や取り付けの作業に耐えられない弱さを持っています。

 従来良く用いられている方法は、バーブレイシングといって、真鍮や鋼鉄、ステンレス製の棒を 格子状に這わせる方法です。この場合、格子が丸見えですので、デザイン上問題が有ります。

 達風では、周囲の枠材を鉛線の代わりに、強度のある真鍮製のH鋼にして、補強としています。 これですと、補強がデザインに響きませんし、取り付け時のハンドリングも良いです。 作品の大きさによって、幅10mmから15mmの枠材を使い分けています。

 《10》仕上げ

洗浄は、お湯と中性洗剤を掛け、真鍮ブラシで磨き上げます パティーナを使い、半田線を黒く染めます

 組み立てが終わったら、仕上げです。 半田付けをする時、表面にフラックスを塗るのですが、これが残留すると錆の原因となるので、よく洗浄します。 お湯と中性洗剤を掛け、真鍮ブラシで磨き上げます。この時、半田線を良く磨いておくと、黒染めが美しくなります。

 洗浄の後に、半田線を黒く染めます。この時使う薬品をパティーナと言います。 パティーナと半田が化学反応を起こして、表面が黒くなります。

 この後、再度洗浄して乾かします。そして、最後に錆防止用のワックスを塗布して完成です。

ステンドグラス「ストレリチア」

 1ヶ月弱の作業で、パネル作品「ストレリチア」が完成しました。

 達風流ステンドグラスは、お客様からの「○○を題材にしてステンドグラスを作ってください。 予算は、だいたい○○円です」のお電話・メールから生まれます。ご連絡を心からお待ちしております。

 制作過程を動画でもご覧いただけます (11分)