70cm角ほどの正方形のステンドグラスをオーダーメイドで作っています。絵柄はスフィンクス+ピラミッド。砂漠の風景なので、黄土色っぽい(アンバーの)ガラスがメインになりますが、ブルーの空も印象的なデザインにしました。
ガラスは濃さの異なるアンバーを4色仕入れました。工房で在庫していたものもあります。このところ、ガラスの調達が難しく、制作者泣かせです。
今回私の好きなモノトーンデザインに近いので、仕上がりが楽しみです。
無鉛ステンドグラス(フュージング画)は文字通り鉛などの金属を使いませんので、ガラスの繋目が無い単板です。一方、伝統的なステンドグラスは、色の境目で鉛の繋目がありますが、ガラスピース1片1片は大柄で、内部に絵付けがなされています。多くが、キリスト教上の出来事が描かれています。
今回の無鉛ステンドグラスも絵付けがされます。伝統的な線描き用の黒い顔料=グリザイユを用います。細筆にこのグリザイユを水で溶いたものを浸して、花や葉の縁取りをしていきます。
この縁取りを定着させるために、電気窯で600℃以上に加熱して、焼成します。
縁取りが終わると、陰影付けです。これはやってもやらなくても良いのですが、陰の部分に淡くグリザイユウをつけることで、絵柄が立体的になります。これをやり過ぎると、逆にリアリティーが増して象徴絵画的な魅力が後退するので、そこそこにしておきます。
この陰影も焼き付けます。これが終わると完成です。
無鉛ステンドグラス(フュージング画)は4枚一組の作品で、雲仙市小浜温泉の旅館に収められる予定です。
直径30cmの作品が2枚あり、そのうち1枚は「ミヤマキリシマ」というツツジの仲間がモチーフになっています。この花は、雲仙市の花に指定されています。
ガラスフリットは、焼成される前は色が淡いです。赤い花もなんとなくぼやけています。
一方、先行しているジャカランダとサザンカは、3回目のフリット乗せが完了し、焼成間近です。
無鉛ステンドグラス=フュージング画の制作方法は、素材の形態の違いにより2種類あります。ガラスの粉やザラメ状の粒子で絵柄を描くフリット技法と、薄板を切って乗せる薄板技法です。今回はより幻想的でなめらかなグラデーションが付けられるフリット技法で制作しています。
30cm角の作品は2個です。1個目は、雲仙市小浜温泉街の至る所で見られるジャカランダです。私も制作に当たって色々調べたのですが、ジャカランダは中南米原産のノウゼンカズラ科で、青紫の花を大量につける世界三大花木の一つだそうです。6月に花の最盛期を迎えるそうで、温泉街の名物だそうです。
ガラスフリットはザラメほどの粒度のものを使いました。カットしたベースガラスの上に下絵に合わせて、フリットの置いていきます。輪郭を正確にくっきりだすというよりは、少し広がったように分布させて、幻想的な雰囲気を出そうと思っています。ガラスフリットは40色ほど揃えていますが、花の部分だけでも4色を混色しています。
2作品目は冬を代表するサザンカです。これは、赤系のガラスフリットで花を、濃い緑で葉を描いています。
赤いガラスは、焼成前は色が薄いので、どの程度乗せるとどの程度の濃さになるかは経験に基づいて加減します。最も、このフリットを載せて焼成する工程は4回以上繰り返すので、1回では完成形にはなりません。
電気釜で焼成すると、ベースガラスにフリットが融け込んで一体化します。焼成作業は電気窯がまる1日かけて勝手にやってくれます。
長崎市雲仙市にある旅館に設置される作品を制作しています。今回は温泉の浴室に取り付けられるということですので、鉛合金を使わない「無鉛ステンドグラス=フュージング画」でお作りすることを提案しました。湿気やイオンを含む雰囲気では鉛合金は腐食しやすいので、ステンドグラス設置は注意が必要です。
デザインは雲仙市ゆかりの四季の花です。
原画は水墨画で描いていますが、実際の作品はカラフルな原色になります。題材はミヤマキリシマ、ジャカランダ、ハマユウ、山茶花です。大きさは30cm四方の正方形と、直径30cmの円形です。
最初の作業は、ベースになる厚さ4mmの透明ガラスのカットです。このガラスの上に、カラフルなガラスフリット(ガラス粒)をのせて焼成していきます。
その前段階で、白のガラスパウダーを薄くのせて焼成しておきます。これによって後の絵が引き立ちます。
日本ガラス工芸協会(JGAA)の選抜10名による「夏のガラス展」が丸善日本橋店で始まりました。私もフュージング画の大作2作を含め7点を出品しています。私以外にはバラエティーに富んだガラス工芸美術が並んでします。拭きガラス、切子、サンドブラスト、ダル・ドゥ・ヴェール、ランプワーク、キルンワークなどです。
会場:丸善日本橋店(東京都中央区日本橋2-3-10)
会期:23年7月12日~18日
日本橋はさすが日本の中心、忙しそうに人々が行き交う中に洗練された都会を文化を感じました。ウソです。日本橋、ただただ暑いです。35℃超の灼熱のビルの谷間、溶けそうです。
会期中(7月16日)、会場で懐かしい仲間との再開もありました。
「受胎告知」のステンドグラスでは、マリア様と天使が一応実態のあるモチーフとなり、その他が光や雲で、実態のないものになります。実態のあるものにはガラスの裏面にオパック処理を施し、見た目に浮き出てくるようにします。
オパック処理は半透明処理で、顔料を窯で焼き付けます。
カットしたピースにオパック処理を施した後、黒グリザイユで表からシェード処理をします。これは陰影で立体感を出すものです。多くのステンドグラスではこの処理をしませんが、このシリーズでは陰影を付けているので、同様に施しました。
焼成の終わったピースにはコパーテープを巻いていきます。